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飲み物には、冷たいものと温かいものに分けられ、珈琲や紅茶、それからジュース各種が絵柄付きでメニュー表に掲載されているが男はその『美味しい飲み方』という項目に目が止まる。
「味の違う果汁ジュースを、それぞれ半分ずつコップに注ぐと、より美味しく頂けますとあるが、どういうことだ?」
「葡萄ジュースとオレンジジュースを足して頂くと、不思議な味になります。皆さまに好評なんですよ」
「試してみるか。葡萄ジュースとオレンジジュースのハーフとやらを頂くとしよう。しかし、疑問だ。これだけ頼んで、無料なのはどうにも信じられない」
「最初は皆さま、そう仰いますが、お店に馴染んで下さってますよ。ご注文は他には御座いませんか?」
「ああ、ない」
女性店員の作る料理に、死者たちが群がり食事をしたり、お茶をしたり、談笑したりと男には不思議なことばかりだ。東洋では幾ら食べても満腹にならない餓鬼道という地獄があると聞いたことがあるが、ここの死者たちは飢えるどころか、寧ろ満たされているように見える。
「あんたも料理の臭いに釣られて、ここにやって来たくちか」
煙草を咥えた死者がおとこのテーブルにやって来た。
「そうだが、タバコは喫煙席で吸ってくれないか。料理が不味くなる」
「結構な口の聞き方じゃねえか。ここには喫煙席や禁煙席って決まりはないんだよ。だからどこでだれがタバコ吸おうが、勝手なんだよ。あんた、名前は?」
「デミタスだ。あの店員はお前みたいな奴に何も言わないのか」
生前もこういう人格だったのだろう。自分勝手な死者もいたものだと、溜め息を吐きながらデミタスは水を口に含んだ。
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