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大学の門を潜ると直ぐに背後で私に声をかけてくる女性がいた。
「あれひより?久しぶりだよね?」
「…えっとぉ…どちら様ですか…」
「えっ?いやだな~ひより頭でも打った?私よわたし!田中玲。」
田中玲(たなかれい)は実はひよりの昔からの友達。昔に比べたら髪は伸びてロングヘアーだけど軽くパーマもかけている。性格は親しみやすくて明朗な女性。
だけど記憶を無くした私にとっては初対面に変わりない。
「すみません…名前を言われても思い出せないんです。」
「…そっか~やっぱりあの時頭を打ったのね。今も未解決事件の当時、ひよりのこと、ニュースで取り上げていたから。ひよりはその事件の目撃者なんだよね。」
「えっ…知っていたんですか?」
「当たり前よ!私はひよりの友達だからあの事件の次の日から大学に来なくなって心配していたの。」
「私…今も大学生…なんですね。」
「うん。そうだよ。あの事件がなければ今ひよりは二十歳。今はどこにいるの?詳しく知りたいわ」
「今は…あの、殺害されたその…黒岩舞さんのマンションに婚約者と住んでます。」
「えっ!マジ!?ひより結婚したの?」
「いや、…その契約結婚…偽装結婚といった状態です。」
「…えっ?何でそんな事になってるの?ひより、利用されてるだけじゃないの?」
「いや、黒岩さんは結構、良い方ですよ。私のこと良くしてくれるし。私…舞さんにそっくりだとか言われて…なんか信じてもいいかなって最近は思ってます。」
「いや、でもさ…騙されてるよ。絶対、裏があるわ。ただ、本当の婚約者にそっくりなだけで萌えて優しくしてるだけっていうのもあるよ。まぁ、私の勘だけどさ。」
「…そ…そんなこと…」
「ひより、余り深入りしない方が良いよ。まぁ、今のひよりには何を言っても信じてくれないと思うけど…本気にならない方がいいと思う。」
確かに玲の言う通り…黒岩さんの全てを受け入れるのは深入りするのは良くないけど今の私にとって黒岩さんは護られている存在だからこの場では玲が敵と思ってしまう自分がいて反発したくなったがあえて、私は何も返さなかった。
「まぁ、良いけど…ひより、今何か調べてることある?あるなら私にも協力させてくれない?」
「えっ…協力してくれるのですか?」
「うん、私はひよりに目を覚ましてもらいたいの!真実を暴いて黒岩さんから解放させてあげたい。今は私に警戒を抱いているひよりの気持ちはわかるけど…ねっ、お願い。」
玲は引き下がらない。私が警戒していても協力できることはしてあげたいという言葉、少しは信じてみてもいいとその時、思ったのです。
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