永遠の。

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永遠の。

「ねえ、お母さーん。私のバッグ見なかった?部屋に無くって。」 「もう、何言ってるの。ソファーの上に放り投げてあったわよ。」 キッチンで晩ごはんの仕度をしていた母は、手を止めてソファーを指さした。 「あ、ホントだ。」 「ふふっ。何か舞い上がってるわね、晴香(はるか)。」 母は目を細めながらそう言って笑った。だってしょうがないじゃない?明日は待ちに待った結婚式なんだから。 一年間の海外赴任から戻った陽太(はるた)は益々格好良くなっていた。体が大きくなった訳じゃないのに、何故か逞しく感じた。 言葉もろくに通じない慣れない土地で、一人頑張ってきたという自負がそう見せたのかもしれない。 そこから両家の両親への挨拶に始まり、結婚式の準備にとりかかった。誰も反対する人なんていなくて、皆に喜んでもらえた。プロボーズからは二年後の明日、私たちは結婚式を挙げる。 「だって、仕方ないじゃん。」 「うん、そうね。明日から陽太(はるた)さんと暮らすのね。」 母の優しい顔が少し寂しげになった。一人っ子の私が居なくなれば、寂しくなるのは当然だと思う。 「ごめんね。」 「馬鹿ね、何で謝るの。陽太さんと幸せにね。」 「うん。」 そのまま話していたら、しんみりとしてしまって二人ともきっと泣いてしまっていたと思う。 「今日は晴香の好きなハンバーグにしたわ。後で手伝ってね。」 母がそう言って話を急に変えた。もしかしたら、泣いてしまわないようにだったのかもしれない。 「うん。」 バッグを手に自分の部屋に戻ってからようやく、にじんできた涙を拭った。
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