32人が本棚に入れています
本棚に追加
スマートフォンを見ながら運転していたトラックの犠牲となってしまった陽太。
陽太が乗っていた軽自動車は大破する悲惨な事故だったのに、陽太の顔には傷なんて一つも無くて、ただ眠っているようにも見えた。だけど、その目が何かを写すことも、その口が音を発することもないのだ。
『本当なら結婚式の日だったのに。可哀相に…』
『用意していた礼服をこんな形で着ることになるなんて…』
『二十七だったって。これからって時に…』
曖昧な記憶の中に残るのは、断片的に聞こえてきた陽太の親戚たちの囁き声。どうして聞きたくない声は届いてしまうのか。
何もかもが現実だとは思えなくて、ずっと、誰かが悪い夢だと言ってくれるのを待っていた気がする。
だけど、予定していた白く明るいものでなく、黒くて悲しい式が粛々と進んでいくのだった。
陽太と永遠の愛を誓い合い幸せの絶頂にいるはずだったその日が、永遠の別れの日となってしまった。その日、私は生きていくための光を失った。
最初のコメントを投稿しよう!