運命の…

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運命の…

急いだら陽太(はるた)に会える気がして、家からずっと走ってきた。ハアハアと短い息、ドクドクと体中に血が駆け巡っている。何年振りか分からない全力疾走に体は悲鳴をあげている。 幽霊でもお化けでも何でも良い、陽太に会いたかった。夢でなくこの世界で。 だけど、橋の上にもどこにも、見渡す限りの景色の中に陽太の姿はなかった。 「バカ。陽太のバカ……」 ――私のバカ。何で会えるなんて思ってしまったんだろう。 あのプロボーズの日と同じ場所に来れば、陽太に会えると思うなんて…。 陽太に会えるどころか、景色さえも全く違う。どんよりと曇った空で辺りはまだ薄暗い。あのピンク色とオレンジ色が混じったような美しい朝焼けなんて欠片もない。分厚い雲に覆われた空は、私の心を映しているのか、今にも泣き出しそうだ。 「会えるわけないじゃん。ね。」 自嘲気味に呟き、橋の欄干に手を乗せた。下を流れる川はあの日と同じように見えるけれど、川の水だって厳密に言えば同じじゃない。だって常に流れていっているんだから。 ――あの瞬間は二度と戻っては来ないんだ。 当たり前の事を再認識したら、私がこの世界にいる意味も見失いそうになった。 ――ここから飛び降りたらどうなるんだろう? 川がどの位深いのか、橋の上からでは分からない。欄干についた手に力を入れようとした時だった。
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