運命の…

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「きゃーー、待って、待ってー!」 若い女性の叫び声に、何事かと振り返ろうとしたら、太股の当たりに衝撃を感じた。 「きゃっ!」 「やだっ、すみませんっ、大丈夫ですか?こらっ、ハル、ダメでしょ。お座り!待て!待てって!」 女性の命令なんてなんのその、リードをぐいぐい引っ張って犬が私に飛びかかっていたのだ。 「やだっ、ホントすみませんっ。いつもはこんな子じゃないんですけど、今日は急に…。こらっ、ハル、落ち着いて!」 ちぎれるんじゃないかって位尻尾をブンブンと振る犬は、女性の命令なんて聞く気配は全くなく、私から離れようとはしなかった。 太い脚に茶色と黒が混じった毛並みは、獰猛な犬種を思わせる。 「何犬ですか?」 「雑種なんですけどね、シェパードが入ってるみたいで。ハル、お座り!」 「ふふっ、可愛い。」 「ありがとうございます。何か、いつもはもっとお利口なんですけど、今日はどうしても散歩に行くって騒ぐし、出たら出たで走るし。もうっ。ハルタ!」 その名前にドキリと心臓が大きく鼓動した。 「ハルタって言うんですか、名前…」 「そうなんです、この子男の子で、多分、春に生またみたいなんで。」
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