運命の…

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しゃがんでハルタに目線を合わせたら、これ幸いとベロンベロンと頬をタップリと舐めてくれた。 「うっ。」 「はっ、ハルタ!ごめんなさいっ、こら、ハルタっ!」 「ううん、良いの。ふふっ、嬉しい。」 陽太と同じ名前の犬のハルタ。何だか困り顔まで陽太にそっくりな気がしてきて妙に嬉しかった。 ――陽太、犬になっちゃったの? 不思議だ。さっきまで飛び降りようかとさえ思っていたのに。 「犬、お好きですか?」 「好き、かな。飼ったことはないけど。」 「おうちは一戸建て?」 「ええ、そうですけど…?」 「ご家族は?」 「両親がいる、けど?」 まだ大学生かその位の歳の若い女の子が、妙な質問をするものだと思い訝った。 「良かったら、ハルタ飼いませんか?」 「ええっ?だってあなたが飼ってるんでしょ?」 「いえ!私、飼い主じゃないんです。ボランティアで保護犬カフェのお手伝いをしているんです。ハルタ、絶賛里親募集中です!」 そう言って差し出された名刺は、その子の名前ではなく、保護犬カフェのものだった。 「ラガーディアン…幸町の。」 「はい。ハルタ、もう一歳になるのに里親の応募がなくて…。ちょっと大きいから敬遠されちゃうみたいで…。」 シェパードの血が入っているなら、まだ大きくなるだろうと思われる。実際、既にかなり大きいし、脚もとても太い。
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