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「僕は自分に怒っていたようなんですがそれも気が付かず朱音さんを怖がらせてしまいました。
朱音さんが謝ることは何もありません」
以前似たようなやりとりをリビングでしたことを朱音は思い出し、また何か冬真が苦しんでいるのではと心配になる。
「僕は・・・・・・」
そういうと冬真は黙ってしまい、朱音は不安げに視線を少しだけ冬真にちらりと向けると、冬真は朱音を見ていた。
「せっかく逃そうとしているのに」
その呟きは無意識だった。だからこそその無意識に冬真は困惑する。
感覚というものは魔術師にとってとても大切だが、ロンドンで出会った朱音にラブラドライトのネックレスを贈ったのはただの子供への気まぐれ、朱音をこの洋館に住まわせたのは利用できると思ったからだ。
彼女に信頼してもらえるように優しく接し、子供に思える行動をフォローするため保護者代わりとして対応もした。
だから利用した詫びとして、出来るだけ不自由しない新しい住居も用意したはずが、結局彼女はここにいて、今度は戻ってこいなどと言っている。
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