第五章 偽りのラピスラズリ

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近くに何台か救急車が止まっていて、周囲に怪我をしたような人、運ばれている人を見て冬真はその中を足早に探しながら鼓動が早まる。 自分の頭に放水された水が飛び散って濡れているの事など気にもせずに。 マンションの裏手に停まっている救急車の後ろで毛布を被ってうずくまり、救急隊数名に囲まれている一人の姿が目に留まった。 「朱音さん!!!」 大きな声、そして聞き覚えのある声に、朱音は顔を上げ周囲を見回す。 そこにはロングコートの冬真が走ってこちらに向かってくるのを、朱音は訳がわからずただ見つめていた。 「朱音さん!無事ですか?!怪我は、どこか怪我をしたんですか?!」 大きなゴミ袋を抱えて全身ずぶぬれでうずくまっている朱音が呆然と冬真を見上げていると、すぐ側にいた救急隊員が冬真を不審そうに見る。
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