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「で、どうすんだ?」
どかりとソファーに座った健人が、水に濡れた前髪を掻き上げて息を吐いた冬真に問いかける。
「オーナーから当分朱音さんの部屋は使えないからホテルを代替にと提案されましたが断りました」
ソファーに冬真が座ると、アレクが温かいハーブティーを冬真と健人の前に置き、冬真が一口飲んでも健人は口をつけない。
「なので朱音さんはここに戻します」
その答えを聞いて健人は額に手を当てた。
「何ですか、大賛成するかと思っていたのに」
冬真の言葉を聞いて大げさに健人はため息をつき、ハーブティーを一気に飲んで立ち上がる。
「そういうのは明日本人に言え」
そういうとリビングを出て行った。
朱音は目を覚まして少し顔を動かすと、ずっと見たかった部屋の中にいる。
ベッドの横にいた黒い犬が覗き込むように朱音を見ていて、朱音はその漆黒の瞳に何故か見覚えがある気がした。
その真っ黒な大型犬は向きを変えベッドを離れてやはりドアをすり抜けていくのをみて、朱音はこれは夢だと確信した。
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