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自分は彼女をどうしたいのだろうか。
冬真の美しいグレーの瞳が自分を見続けていて、朱音は恥ずかしくて逃げたくなる。
あの夜、青かったあの瞳は見間違いでは無い、そう思うけれどとてもここではその理由を聞けない。
朱音は冬真の行動と発言の真意が理解できないのがもどかしかった。
「僕は朱音さんが幸せに過ごしてくれることを望んでいます」
ふと口に出した言葉に偽りは無い。
だから、と続けようとして冬真はまた口をつぐむ。
朱音はその言葉がどこまで本当かわからないと思うのに、やっぱり自分が思っていたことに間違いは無かったと思えてしまう。
「やっぱり冬真さんは優しい人ですね」
そんな無邪気な朱音の言葉は、まだ自分を正しく見ていない事を冬真に確信させた。
あんなに恐ろしいことに巻き込まれ、まだこの子はこんなことを言うのかと。なのに、どうして自分の何かが揺さぶられるのだろう。
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