12人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
逢瀬
合宿当日、明久たちは電車やバスを使って、田舎町の合宿所へ赴いた。
「ド田舎かよ……」
「いいじゃん、合宿っぽくて」
「混浴風呂とかねーかな」
盛り上がるほかのメンバーをよそに、明久はため息をついた。
「なーに暗い顔してんだよ」
祐介は小突きながら話しかけてくる。
「参加したくなかった」
明久が率直に言うと、祐介はやれやれと肩をすくめる。
「そんなに暗いオーラ出してっから、彼女できないんだよ。お前、それなりにいい顔してんのに。ま、俺ほどじゃないけど」
冗談めかして言う祐介に、明久は怒りを覚える。
「そういうの、余計なお世話っていうんだよ」
「はいはい、そういうことは人生楽しんでから言おうな」
祐介は軽く流すと、ほかのメンバーに絡みに行った。
「ったく、人の気も知らないで……」
明久は恨めしそうに呟きながら、1番後ろからついていく。
合宿所につくと、すでに合同する大学生たちが練習をしている。
「俺らも荷物おいで練習するぞ」
部長の言葉に皆で返事をすると、部屋に荷物を置きに行った。
「よーし、可愛い子探すぞ!」
同室の祐介は、ラケットを振り回しながら気合を入れる。
「なんのための合宿だよ……」
テニスに興味すらない明久だが、うんざりしたように言う。
「サークルなんてそんなもんだって」
ヘラヘラしながら言う祐介と一緒に、テニスコートに向かった。
テニスコートでは先に来ていたメンバーが、挨拶をしていた。どうやら向こうもテニスには本気ではないらしく、雑談をしている人が目立つ。
「もう、マナミったら」
女性の声に反応してそちらを見ると、かつて愛し合っていた義妹である愛美が、楽しそうに雑談をしている。
「愛美!?」
「おに……明久さん……!」
明久が驚いて名前を呼ぶと、愛美は言い直しながら明久の元へ小走りで来る。
「驚いた……」
「私も……。久しぶり、元気にしてた?」
「あぁ、愛美は?」
思わぬ再会に感動していると、祐介が明久の肩に手を置いた。
「おやおやぁ? あんなに彼女いらないとか言ってた明久がナンパですかな?」
「そんなんじゃねーよ」
明久が祐介の腹に肘を入れると、愛美は声を上げて笑った。
「ふふふっ、楽しいお友達がいるみたいでよかった。またね」
「あ、あぁ……、また……」
明久は寂しさを覚えながらも手を振ると、祐介を引っ張って別のテニスコートに行った。
最初のコメントを投稿しよう!