逢瀬

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逢瀬

合宿当日、明久たちは電車やバスを使って、田舎町の合宿所へ赴いた。 「ド田舎かよ……」 「いいじゃん、合宿っぽくて」 「混浴風呂とかねーかな」 盛り上がるほかのメンバーをよそに、明久はため息をついた。 「なーに暗い顔してんだよ」 祐介は小突きながら話しかけてくる。 「参加したくなかった」 明久が率直に言うと、祐介はやれやれと肩をすくめる。 「そんなに暗いオーラ出してっから、彼女できないんだよ。お前、それなりにいい顔してんのに。ま、俺ほどじゃないけど」 冗談めかして言う祐介に、明久は怒りを覚える。 「そういうの、余計なお世話っていうんだよ」 「はいはい、そういうことは人生楽しんでから言おうな」 祐介は軽く流すと、ほかのメンバーに絡みに行った。 「ったく、人の気も知らないで……」 明久は恨めしそうに呟きながら、1番後ろからついていく。 合宿所につくと、すでに合同する大学生たちが練習をしている。 「俺らも荷物おいで練習するぞ」 部長の言葉に皆で返事をすると、部屋に荷物を置きに行った。 「よーし、可愛い子探すぞ!」 同室の祐介は、ラケットを振り回しながら気合を入れる。 「なんのための合宿だよ……」 テニスに興味すらない明久だが、うんざりしたように言う。 「サークルなんてそんなもんだって」 ヘラヘラしながら言う祐介と一緒に、テニスコートに向かった。 テニスコートでは先に来ていたメンバーが、挨拶をしていた。どうやら向こうもテニスには本気ではないらしく、雑談をしている人が目立つ。 「もう、マナミったら」 女性の声に反応してそちらを見ると、かつて愛し合っていた義妹である愛美が、楽しそうに雑談をしている。 「愛美!?」 「おに……明久さん……!」 明久が驚いて名前を呼ぶと、愛美は言い直しながら明久の元へ小走りで来る。 「驚いた……」 「私も……。久しぶり、元気にしてた?」 「あぁ、愛美は?」 思わぬ再会に感動していると、祐介が明久の肩に手を置いた。 「おやおやぁ? あんなに彼女いらないとか言ってた明久がナンパですかな?」 「そんなんじゃねーよ」 明久が祐介の腹に肘を入れると、愛美は声を上げて笑った。 「ふふふっ、楽しいお友達がいるみたいでよかった。またね」 「あ、あぁ……、また……」 明久は寂しさを覚えながらも手を振ると、祐介を引っ張って別のテニスコートに行った。
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