epilogue

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epilogue

何もかも諦めていた。 あの日、一樹ちゃんを失った時から、ずっと私は生気を失っていた。 でも、口ではそう言っていながら、私は諦めていなかったものがあった。それは、''生きる事''ーーー死にたいと思った事はあったけど、実際に死のうという勇気は全然湧かなかった。 「弘さーん!今日は一樹ちゃんのお墓参りなのに寝坊なんて、ほんと、一樹ちゃん泣いちゃいますよ!」 ミーンミーンミーン、とセミが鳴り響く中、大きな声で部屋に向かって叫ぶ私。向こうの方からバタバタと慌てながら「ごめん〜」と駆けて来る弘さん。喫茶店の入り口の扉に掛かっている札をcloseにして、よし、と頷く。それを見て、ふふっ、と笑った 一樹ちゃん、久しぶり。 私、今生きています。 手術が成功して、目が見えるようになりました。 医療の発展って凄いです。 一樹ちゃんがあの日くれた言葉、「私が強い」と言ってくれましたね。 今でも、私はあの言葉の意味は分かりません。強いとも思えません。 でも、あなたが見てくれているのを知っています。 天国の上から、いつも見守ってくれていますよね。 隣にいなくても、私、頑張ってるよ。 大切な人も出来たよ。 あなたの優しさがキッカケなの。 全部、あなたが居てくれたから、今の私がいます。 今更だけど、私、一樹ちゃんが好きでした。 そっと目を開く。目の前には、一樹ちゃんのお墓があった。寂しいけど、私は大丈夫。前を向いて歩き続けるから。 「ーーーさ、行こうか。」 ___end___
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