その恋は涙となる

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席に着くなり、名前を呼ばれ、「はいっ」と振り返る。でも、私は何処を見ても闇の世界だから、きちんとした方向を向けていない。「おーい、こっちこっち」と声がハッキリする方向へと体を向ける。私は、視力とは反対に聴力は抜群に良い。 「おっ、流石。居場所が分かるのか。」 「ーーーー・・一樹ちゃんの声がここから聴こえてくるわ。」 そう言って私は手を差し伸べる。行き場のない手を、目の前に居るはずであろう一樹ちゃんは、私の手を両手で握りしめてくれた。そして、優しく「おはよう」ともう一度言ってくれるんだ。 「ーーーうん、おはよう、一樹ちゃん。」 私は彼の温もりを直に感じながらそっと微笑んだ。皮膚の薄い、細い手を包みこみながら。
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