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私の名前は田中有栖
名字はありきたりなのに(全国の田中さんすみません)このファンタジーめいた名前のおかげで幼少期は散々苛められた。
と、まあ今はそんなことどうでも良い。
まず確認するべきは私のいる現在地がどこなのかだ。
辺りを見渡せば、後ろに断崖絶壁。高い壁がそびえたつ。
前方には背の高い木が多い広そうな森。
下は地面。
上は...まあ青空だね。あれはカラスかな。
「とりあえず日本...ではないことは確かだね」
ともかくそんなあり得ない状況のせいか、ここが異世界ということに納得するにあまり時間はかからなかった。
そしてその納得せざるを得ない今の私のあられもない姿の説明をしよう。
まず上半身、何故か手に握られていたTシャツを裸の上に着ている。スースーする。
下半身は池に浸かっている。何故か。
そう、あの童話の人魚姫のように下半身が魚になっていたのだ。
陸に放り出しても痛みや熱をもつことはないが、都合良く真横に小さめの池があったため入らせてもらっている。
水に入るとなんとなく気持ちが良い。
最後に背中には控えめな翼。
水に映る自分を見る限り、容姿はかなりガラリと変わった。
黒髪ミディアム、瞳が小さいのが悩みだった目、口元のホクロ等、容姿のほとんどが変わってしまった。
腰までつくほどの青みがかった銀髪、大きくつぶらな黄金の瞳、口元のホクロは...変わらなかったな。特にコンプレックスって訳ではないけれども。
「誰だよこの美少女...」
とにかく人間ではないことは確かである。
何これドッキリ?と初めは思ったが、地球に人体をこんな風にする技術はない筈だ。
あとなんかキラキラしてる。回りにキラキラしたものが飛び散っている。
漫画とかでいう効果トーンのキラキラではなく、何かの粒のようだ。
そして暇をもて余した私は、上半身に着たシャツを濡らさないよう足(魚部分)で水遊びをする。
「何て言うんだっけな...人魚に翼がついた今の私...」
「セイレーン...」
「あぁそうそれ!
え?誰?」
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