9人が本棚に入れています
本棚に追加
6、相談の受け方
正直に言うと、とてつもなく疲れた。玉木さんは今まで、どれだけ悪口を言われてきたんだろう。その言われてきた分が、今ここで爆発してしまったんだろうなぁ。
「ごめんなさい……ずっと一人で話してた……」
「ううん、大丈夫」
言いたいことはいくつかあった。けど、ここで言うのは間違いだと思う。
「さっき、新藤君は優しいって言ってくれた。でもね、今のを聞いて分かったと思うけど、私は……弱いんだ」
「……意見、言っていいかな?」
「……うん」
例え、間違いであったとしてもこれは言わないとかな。このタイミングなら言いやすいかも。
「玉木さんは、強いし優しいよ」
「え?」
「小学生の頃から悪口を言われてきたんでしょう? 誰かに相談しても良かったのに、ずっと一人で耐えてきた。それって、玉木さんが強い人じゃないとできないよ」
「……」
「途中で誰かのせいにすることもあった。けど、最終的に自分が弱いからという理由になった。自分のせいにするのは、玉木さんが優しい証拠だよ」
「……ありがとう」
泣いている。どうしよう……褒め言葉のつもりだったけど、駄目だったのか?
「あ……ごめん。余計……だよね」
「……ううん、違うの……新藤君」
「……っと言うと?」
「私、ここまで的確に褒められたことがなかった。だからさ……ものすごく嬉しいの」
「それは良かった」
「この涙は、さっきまでの悲しい涙じゃない。幸せな涙……本当にありがとう」
ここまでの感謝を笑顔で言われたことがあっただろうか。
こういう風に誰かに相談されるのは、初めてじゃない。
悩んでいる人の力になりたくて、よく人の相談を受けていた。相談してくれる人はいつも浮かない顔で「ありがとう」と言う。少しは力になれたんだと思いたい。でもさ、そんな顔で「ありがとう」と言われると胸が痛くなるよ。「ああ、僕はこの人を助けることができなかった……」とか考えちゃうよ。
こんなことを考えていると、いつも泣きそうになる……悲しくなる……寂しくなる。だけど、玉木さんは泣いているのに笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
それが、たまらなく嬉しい。
「玉木さんの力に少しでもなれたのなら、とても嬉しいよ」
「充分過ぎるぐらい力になってる。本当にありがとう。それとね。これからは私のことを詩音って呼んで欲しい。良いかな?」
「分かった。それじゃあ、詩音。僕のこともこれからは正樹って呼んで」
「分かった! よろしくね、正樹!」
外はあいにくの曇りだ。なのに目の前には、綺麗な青空が広がっている。
「ごめん! 遅れた! 新藤君はいる?」
そういえば、先生いなかったんだっけ……。
タイミング悪くないか!?
最初のコメントを投稿しよう!