1.始まりだけど終わり

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

1.始まりだけど終わり

今日は卒業式。 私は中学2年生だから別に関係の無い事なんだけれど。 今の私にとっては一大イベントだ。 今___私は恋をしている。 3年生の先輩に。 だからその先輩と会える最後の日。 (今日は…。想いを伝えたい。) そう思って書いてきた手紙。 渡そうと思うと怖くなって手が震える。 封筒に視線を落とすと この2年間の思い出が蘇ってくる。 入学式の日に緊張していた私を励ましてくれた先輩。一目惚れしちゃったんだよね。 __部活で上手く行かなかった日は 電話で話を聞いてくれた。 __私が泣いている日は それを知っているのかのようにLINEが来た。 __テスト前は一緒に勉強会も開いた。 そうやって仲良くなっていくうちに 私はどんどん どんどん好きになっていった。 でも私の恋が叶うことは無いことを知ったのは…いつもより寒い冬の日だった。 クリスマス前で浮かれていた私は 初めて先輩と恋バナをした。 「先輩は好きな人いるんですか?」 軽く聞いたつもりだったのに。 先輩は顔を真っ赤にして誰が好きなのかを教えてくれた。写真も見せてくれた。 携帯に写っていたのはとても綺麗な 私の知らない女の人だった。 「この人だよ、笑」 照れ笑いした先輩の顔は 今までの中で見たことのないくらい… これからも…私が見ることの出来ないであろうくらいの満面の笑みだった。 (恋って素敵…。だけど。) その後私が なんて返したのかは覚えていない。 ショックすぎて悲しすぎて何も覚えていない。けれど先輩のあの笑顔は胸と頭に焼き付いていた。 そんな事があってからも 私は恋をやめられなかった。 日に日に好きになっていく。 先輩以外、見えなくなっていく。 自分で自分が怖くなるほどだった。 いつか自分では無くなってしまいそうだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!