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2.伝えたい
【卒業生が退場します。温かい拍手でお見送りください。】
アナウンスとともに卒業生が起立。
卒業証書を受け取った先輩方の顔はとても
強く美しく凛々しかった。
私は吹奏楽部員だから退場の曲を演奏する。
選んだ曲は3曲。
私の恋する先輩は1組。1番初めに退場してしまう。
けど私は1曲目にソロがある。
トロンボーンソロ。
先輩が1組だからどうしても1曲目にソロが欲しかった。ソロが吹けると分かった瞬間、喜びで視界が歪んだ。
指揮者が手を上げる___始めの合図。
みんな楽器をそれぞれ構える。
それぞれの想いを胸に。
(1.2.3.)
イントロが始まった。優しい木管の音色が響く。
もうすぐ私のソロ…。
ゆっくり私は席をたった。
(先輩…。私の音色よ、届け__)
私の音は気のせいかもしれないが
いつもより深く優しく
そして切なく聞こえた__
深く息を吐いて
体育館の端まで私の音が聞こえるように_
先輩に届くように。
先輩の卒業を祝うこの気持ちと
行かないで、というワガママな気持ち
両方とも
届いてしまえば良いのに。
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