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「……もうしないって言葉。私、信じてたよ。信じたかったよ。だけどもう、無理だよ。……また裏切られるのが、こわい」
私を抱きしめたまま顔を上げない彼は、今何を考えているのだろう。
視線を下げてみるけれど、その表情を窺うことはできない。
だけど……右肩が、薄っすらと湿っている感覚がする。
もしかして、泣いているのだろうか。
「っ、……お前のこと、いっぱい傷つけてきた。許されないことしてきたって、分かってる。だけど……別れたく、ない」
顔を上げた彼の瞳は――思った通り、涙に濡れていた。
実際に男の人の涙を見るのなんて、初めてかもしれない。
だけど顔の整っている彼は泣き顔すらも絵になっていて、何だか狡いな、なんて。場違いなことを頭の片隅で考える。
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