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「……みっともないって分かってる。でも、好きなんだ。お前のことだけが好きなんだ。……っ、愛してる」
そう云って、再び私を力強く抱きしめる彼。
――また、浮気されるかもしれない。また裏切られてしまうかもしれない。
そんな考えは拭えない。
それでも――彼を許したいと思う私は、馬鹿なのかもしれない。
もう一度だけ彼を信じたいと思う私は、本当に愚かでどうしようもない。
分かっている。
だけど、縋りつく彼の腕を振りほどくことなんて、私にはできそうもない。
――寂しがり屋で、誰よりも孤独を恐れている彼を、やっぱり私は放っておけないらしい。
どうせなら、このまま世界で2人きりになれたらいいのに。
そうしたら、傷つくことなんて恐れずに、ただお互いを見つめ合って生きていけるのに。
そんな馬鹿みたいなことを考えながら、縋りつく彼の背中にそっと手を回した。
朝日が照らし始める世界の片隅で、ただ溶けあうようにして、私たちは2人抱きしめ合っていた。
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