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4  翌朝、私は四丁目の平木のアパートに向かった。ジャージ姿の平木と寝巻き姿の娘が、私を迎えた。熱は下がっているという。 「万一、引き付けを起こしたら、この薬を飲ませてください。保険証も、一応、置いていきますので」ひと通りの説明をすると、平木はスポーツセンターへと向かった。  気のせいだろうか。平木の態度がなんとなくよそよそしかった。病の娘を置いて、バドミントンの大会に出るのだからそんな気もちになるのも仕方あるまい。  娘はしばらくテレビを見たり、漫画を読んだりしていたが、薬が効いてきたのか、眠ってしまった。  私はすることもなく、窓から景色を眺めたり、本棚を眺めたりしていた。本棚には、エンジニアらしく「システム」や「プログラミング」といった私には聞きなれない言葉が踊っていた。  ふと、テーブルの上に置かれた保険証に眼が行った。  瞬間、私の身体が凍った。  そこに書かれた娘の誕生日に私の眼は釘つけられた。心臓が激しく打つ。よろける様にして、椅子に尻をついてしまった。 「平成十×年十一月十一日生まれ、女」 十年前の「一」が並んだその誕生日…。  平木さん・・・、あなたは・・・。  私は気が遠くなり、背もたれに体を預けた。  昼過ぎ、平木からメールが来た。 『今回も四位でした。  いろいろとご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした』   (了)  
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