決して変わらないもの

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 西川環と水瀬行成の出会いは小学生時代に遡る。  西川環の家族が東京から八宮市に引っ越して来たのが始まりだった。  行成の住む家の直ぐ側に引っ越してきた西川家は、子供が同級生ということもあり、水瀬家と家族ぐるみの付き合いをするようになった。家族ぐるみとは言っても、意気投合した母親同士が他の家族の構成員を巻き込んだだけであるが。  行成は、初めて西川環に会った時のことを、今でも鮮明に覚えている。  とにかく「綺麗な都会っ子が来た」と思った。小学生にして環は随分と垢抜けていた。  家も近かったので、同じ小学校、同じ中学校、そして、何の縁だか、二人は同じ高校にも通った。  家の方向が必然的に同じになるので、一緒に通学にすることも多く、それが周囲に要らぬ誤解を与えたりもした。  ありがちな話ではあるが、中学校時代、高校時代、折に触れて二人は「お似合いのカップル」だとか、「夫婦」だとか言って誂われた。朝学校に行くと、黒板に「相合傘」の絵が書いてあって、その左右に西川・水瀬とか書いてあるっていうアレだ。  思春期の行成は顔を真赤にして、黒板消しで、その落書きを消したものだった。 『嫌なの?』 『環は平気なのかよ?』 『う〜ん。私は、あまり気にしないかな?』 『俺と恋人同士だって言われて、腹とか、立たないのかよ?』 『あはは。マジウケルよね。無いのにね〜』    そういう時の環の上目遣いは、行成をドギマギさせると同時に、なんだか苛立たせた。  行成にとって、環は、やっぱりどこか特別な存在だったのだ。 『ていうか、こういうことやる同級生って程度低いナーって思っちゃうから、相手にする気がなくなっちゃうんだよね。好きにすれば? って感じ?』 『はぁ〜。環は強いよな。精神、(はがね)なんじゃね?』 『(はがね)って。流石にそれは言い過ぎ。まぁ、行成ほど豆腐メンタルじゃないけどね』 『誰が、豆腐だ。しばくぞ』  一見、お淑やかで、物静かに見える、長い髪の少女は、その実、あけすけで、豪胆な骨太女子だった。西川環は、友人たちと衝突しながら、男子からも女子からも一目置かれる存在になっていった。
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