決して変わらないもの

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 行成と環は、だから幼馴染と言える存在だ。  そんな二人の間に、恋愛関係が全く無かったわけではない。同級生たちは誰も知らないことだけれど、二人は高校時代に一度だけ彼氏彼女として付き合っている。  でも、一ヶ月持たずに、恋人関係を解消することになった。理由を一つ言うならば、二人はお互いを知りすぎていたし、近すぎたということだろうか。今時の高校生の恋愛をするには、二人の間には生活感がありすぎたのだ。 『やっぱ、私達、違うんだよ。高校生の恋愛って感じじゃないもん』 『なんとなく分かるわ。それ』 『行成のこと嫌いだとか、そういうことじゃないんだよ? でもさ〜、私達って、今、高校生の恋愛ってノリで付き合う関係じゃないと思うんだよね〜』 『それな。別に恋人として付き合っても変わらないし、付き合わなくても変わらない。そーいうやつだろ?』  何故か握り拳のストレートが、行成の左頬に突き刺さり『そーいうやつさ』と西川環は悪びれない笑みを浮かべた。 『じゃあ、俺たちどうすんの? 一生付き合わないの?』 『う〜ん。付き合ってもいいと思うよ? でも、付き合わなくても良いし、それぞれに別の恋人が居たって良いと思う』 『あー、そういう。……でもま、多分、人生で環のこと、嫌いになることは、無いんじゃないかな〜。付き合っても良いラインで?』 『あー、それあるかもね〜。私もそうかも。行成なら付き合っても良いんだけどね、きっと、これから先でも、どこか好きなタイミングで』  そんな話をしていたのは、高良瀬川に掛かる大橋の上だったと思う。そこで環がやおら『じゃあさ――』と提案したのだ。  大人になって、どちらにも相手が居なかったら、あらためて付き合おうよ、と。  そんな青い高校生時代を経て、二人は大学へと進学した。西川環は地元の大学へ、水瀬行成は東京の大学へ。  一八歳の春。二人の人生は分岐した。  そして離れていった。
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