1人が本棚に入れています
本棚に追加
「よくまとめられたな」
夏休みがおわり9月の初め、学校で発表会があった。みんなはネットで調べた、例えば百科事典のサイトにあるようなことを繋げたものばかりで、先生があれだけ言ったのに写真もネットから拾ってきた人がほとんどだった。
先生はそんな発表を見るたびに
「これはここのサイトからの引用だな」
とか
「その写真は公式サイトから取ってきたろう。アングルが同じだよ」
などと、警察のようにしつこくしつこく指摘をしてきた。
けれど僕たちの発表には
「うん、きちんと写真も撮ってきたな。調べ学習も良くできている」
と、拍手をしてくれた。
先生に褒められて僕たちは得意げだった。
それからあっという間に時は過ぎた。誉められたと言ってもその時だけで、普段勉強ができない僕たちは、テストやら補講やらに毎日おわれていた。ちなみにそれから抜け出そうとするもんだから毎日先生にも追われていた。
だから、道夫のことはすっかり忘れていた。
「なあ、知ってるか」
テストが落ち着いたある日のこと、孝は目を大きく見開きながら言った。
「あの場所って昔――」
「あの場合って?」
「夏、調べただろ?御用邸だよ」
「ああ」
言われて記憶の中から映像を引っ張り出す。門と建物と縁側と、そして、道夫の顔を。
「あの場所って昔は、視力障害がある人たちの支援センターだったらしいぜ」
「え」
ネットで調べてみると、たしかに御用邸が天皇に献上されたあと、支援センターとして使われていたようだった。しかし、それも昔のことで今ではもうその場所は存在しない。
「あいつ、サングラスかけてたよな?」
「うん……」
「あいつがサングラスかけている理由って……」
僕たちは黙りこんだ。予想していたことがやはりあっていたのだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!