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「冗談でしょ,お母さん」
ネフィが大きな声で叫ぶが,ラージェはただただ首を横に振るだけであった.
「そんな,お母さんは魔女なんでしょ?なんとかできるんでしょ」
「ええ,ネフィ.それは簡単よ.でも私はそうはしないわ」
「どうしてよ,お母さん,どうしてよ」
泣きながらそう言うネフィの頭に手を伸ばすとラージェは悲しそうに微笑んだ.
「私はね,度し難い魔女なのよ.ネフィ?あなたはさっき私がしたことを見て恐ろしいとおもったでしょ」
ネフィは静かに頷く.なぜかわからないが無性に恐怖そして嫌悪感を抱いたことは確かだった.
「そう,それならよかったわ.でもね私はそうじゃないわ」
そう言うラージェは先ほどのように異常な執着心が目の中に灯っていた.
「私はね魔女なの.ええ,やるといったらやるの.魔法を使って分解できると言ったわ.そのことを後悔なんてしてないの」
そう言ったラージェを驚いた眼で見つめる.横で聞いていたギィも思わずラージェの方を見てしまう.てっきりギィはラージェが罪深い魔法を創ったことによる罪悪感から死ぬつもりだとおもっていたからだ.だが彼女は後悔してないと言った.では何のために死ぬつもりなのか.
「私はね自分の創った魔法に愛着すら覚えてしまうのよ.ただあの時,使用した馬鹿達が悪かっただけ,今でもどこかでそう思ってしまうのよ」
信じられないものを見る目でネフィはラージェを見つめる.そして思わず左手が動いてしまった.
パチン
乾いた音がした.ラージェの頬には紅い跡ができていた.だが,ラージェは驚いた様子もなく,ネフィの方を見つめる.
「軽蔑するかしら」
「ええ,当たり前よ.おかしいわ,お母さんは・・」
その先の言葉を言えずに嗚咽を始めてしまうネフィに淡々とラージェは続ける.
「それが私が死ぬべき理由よ.私は魔女である限り,そう思ってしまうの.ええ今だってそうよ,魔女として話している限り,後悔なんて湧いてこないのよ」
溜息の音が聞こえた.二人がそちらの方を見るとギィが背筋をピンっと伸ばして立っていた.
「魔女,ラージェ.貴女が条件を満たされたことを主人に代わり確認しました.そしてネフィ,いや魔女ネフィ.これからあなたは主人の弟子となられる」
かしこまってそう言うと,ギィは一礼をする.それにラージェは恭しくお辞儀を返した.
「なによ,ギィ.あなた何を言っているのよ」
「魔女ラージェ,貴女に一つだけ言いたいことがあります.魔女ラージェは何も後悔などされていないのでしょう.ですが,ネフィの母,ラメエル=カレン ではどうなのです」
そう言われると,ラージェの目に灯っていた異常な執着心の灯はゆっくりと消えていった.
「お母さん・・」
「許せないのよ,自分が,魔女としての自分が」
ラージェは涙交じりの声でそう呻いた.
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