第二節 魔女の掟 その1

1/2
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ

第二節 魔女の掟 その1

 “ジリリリリリリ”  枕元で目覚ましの音がして神蔵はハッと目を覚ました。  枕元の置き時計をつかんで時刻を見ると、朝の7時だった。 (ゆ、夢か...驚いたな...でも、妙にハッキリとした夢だったな...)  彼は思わず液晶テレビの横においてある有田焼の蛙に目をやった。 (口づけだって?...どういうことなんだろう?...確かに、この蛙の置物の存在自体が不思議なんだけどな...やっぱり、俺が持ってきてしまったのか?...でも、どこから?)  少々、二日酔いの頭であったが、神蔵はしばしベッドの上に座り込んで考えた。 (返すとすると、紅羽岩河駅の地下だが、、、本当にあんな場所があるのだろうか?...夢じゃないのかな?...いや、とにかく、今日はこの蛙の置物を持っていって、会社の帰りに紅羽岩河駅まで行ってみよう) ******  有田焼の蛙と、夢に出てきた美女の影響で、その日の神蔵の仕事内容は散々であった。  まず、紅羽岩河駅の構内の様子について考えすぎて、いつもの列車の2回の乗り換えで、2回ともに1駅乗り過ごしてしまい、そこから戻ったため、9時からの会議に10分も遅刻してしまった。  当然、プロジェクトメンバーからは冷たい視線を浴びたが、更にその会議中に紅羽岩河駅の駅周辺の様子を考えてしまい、プロジェクトリーダーが発言した重要な内容を聞き洩らしてしまった。  そして会議の終わりの11時に部長からは小言を言われ、更に会議の議事録を「今日中にまとめて提出しろ」と言い渡された。  彼は自分がやらなければならない他の仕事もやりつつ、その合間を見て、16時までに議事録をまとめて提出したが、「重要な項目が抜けている!」と指摘を受け、それが会議で聞き漏らしてしまった内容と分かり、急ぎプロジェクトリーダーの元に駆け付け、平謝りして、再度、発言についての要約の説明をしてもらい、議事録にまとめて部長室に駆け付けたのが17時過ぎであった。  ところが、なんと、部長は今夜は、お得様の接待で近くの料亭に向かっており、20時までは居るとのことで、その料亭の前の喫茶店で2時間待って、出て来たお得意様の顧客やウチの社員の中から部長をつかまえたが「馬鹿もん!」と怒られた。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!