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第二節 魔女の掟 その2
神蔵は前の時と同じように細い路地を歩き突き当りで左に曲がった。
そして__前に来たときと同じように__小料理屋[有田亭]が目の前にあった。
「ゆ、夢じゃなかったんだ...あったんだ[有田亭]...」
神蔵は安堵すると同時に、急いでスーツの上着のポケットから例の有田焼の蛙の置物を取り出した。
「...それじゃ、さようなら...蛙ちゃん」
彼は店のガラスの格子戸の右横の地面にある平らな石の水溜りの左上隅の岸辺に、前と同じように蛙の置物を置こうとしたが___
(これで、、、もう、、、たぶん、、、会えないんだよな)
神蔵は夢の中で見た純日本風の美女__燦宮 影花__との約束を思い出しつつ、置物の蛙のわずかに開いた口に、軽く自身の口を合わせた。
そして、彼は蛙の置物を石の上に置くと、そそくさと店の前を後にしたが、日本家屋に囲まれた路地の細道は照明が暗くなったのか、いやに周囲が見辛くなってきていた。
(あ、これはまずい!消灯の時間なのか?)
神蔵は急ぎ足で元来た路地を小走りに引き返し、角を右に曲がっていったが、路地は一気に闇に包まれていった。
「うわっ!やばいぞ、これは!」
彼は半ば手探り気味で歩き、通りのはずれにある小さなドアを探した。
すると、闇の中にいやにくっきりとした白いドアがあるではないか__
彼はそのドアを見失わないように急ぎ金属の取手をつかむと右に回そうとしたが__鍵がかかっているのか開かないではないか!
(えっ?!えっ?)
彼はあわてて、なおもドアの取手を開けようとガチャガチャさせた。
「おいっ!誰だ!こんな夜中に!」
ドアの横にある曇りガラスの小さな窓からサァーッと明かりが漏れ、誰か男がドアのところまで、やってくる音が聞こえてきた。
(ああっ!助かった!)
神蔵は安堵し、ドアが開けられるのを待った。
ドアが内側から開き、まばゆい光の中に神蔵と同い年くらいの見知らぬ男が立っていた。
「?誰だ、お前? こんな夜中に!」
男は少々警戒気味に身構えるような恰好で神蔵を睨み付けた。
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