第二節 魔女の掟 その2

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「えっ?!」  瞬間的にドアの中が見え、そこは、どこか知らないアパートの一室に見えた。  神蔵が大急ぎでドアの周囲に目をやると、そこはまだ新しい2階建ての集合住宅の1階の部屋の一つで、表の通りからは門も無く入れる位置にあった。  神蔵は驚愕したが、すぐに大急ぎで詫びを入れて誤魔化した。 「す、すみません。建物を間違えました!ごめんなさい!」  神蔵は小走りにその場を立ち去ったが、去り際に男がぼやく声が聞こえてきた。 「...ったく! 人騒がせな。空き巣じゃねぇだろうな...」  神蔵は警察にでも通報されたらやっかいと思い、ずっと小走りにやや狭い通りを進んでいったが、今自分はどこを走っているのか、皆目見当がつかなかった。  しかし、少しすると、150mくらい離れたところに信号機が見え、どうやら太い通りがあり、車が行き来している様子であった。 (あっ!大きな通りだ!あそこまで行けば何か分かるかも!)  神蔵はホッとした気持ちで小走りの速度を上げて、太い通りまで進んでいった。  やがて、彼は大通りの交差点に出た。  そして、夜の暗い照明の中で、交差点の標識を探したが、小さな交差点なせいか標識名は見当たらなかったが、大通りの夜の景色からも、そこは紅羽岩河(べにはねいわかわ)駅の出口が面している北翻(きたほん)通りであることがわかった。 (でも、この場所では、たぶん紅羽岩河(べにはねいわかわ)駅からは、だいぶ離れてしまったな、、、終電があるかどうかわからないからタクシーで帰るか...)  しかし、駅から離れた場所のせいかときどきタクシーは通るものの空いているタクシーは見当たらず、仕方なくそのまま彼は40分ほどかけて歩いて皇子(おうね)にある自分のアパートに戻った。 「ふぅっ!疲れた!」  神蔵はドアを開け、中に入ると、いつも通りにダイニングキッチンの照明は点けずに、そのまま八畳間まで進み、手探り一発で、いつもの場所の部屋の明かりのスイッチをオンにした___ 「うわっ!!」  神蔵はまさに飛び上がって驚いた。  なんと、リビングルームの真ん中の小さな座卓の前に一人の女が正座をしているではないか。  シックな袴姿、長い黒髪、切れ長の一重まぶたの目、薄く横に長い赤の唇__そして、美女__ __その人は__燦宮 影花(さんみや かげか)__その(ひと)であった。
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