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「おかえりなさい。神蔵 秀人さん」
燦宮は両掌を合わせて付いて軽いお辞儀とともに丁寧な挨拶で神蔵を出迎えた。
「あ、あれは夢だったと思うんだけれど、、、あ、あなたは、確かに今朝の夢に出てきた”燦宮 影花”という人と、そっくりなんだけれど、、、」
少々しどろもどろでそう言う神蔵の頭には、夢の中で見た”燦宮 影花”という漢字も残っていた。
「はい。その本人です。私が”燦宮 影花”です」
燦宮は神蔵を見てそう答えるとにっこりと微笑んだ。
「...ということは、あの[有田亭]の店に返した蛙の置物は...もしや、あなたが?」
神蔵は鎌をかけるように燦宮に聞いてみた。
「はい。あの蛙の置物は私のもう一つの姿です」
はっきりとした燦宮の返答に、かなり迷い気味であった神蔵の頭の中は、こんがらがった糸が少しだけほぐれたような気がした。
「...で、あなたは、蛙の置物の姿から人間の姿に戻って、僕よりちょっと早く、ここに着いたと」
神蔵はさらに頭を整理するために口に出したが___
「はい」
という屈託のない燦宮の返答に、聞けば聞くほど疑問がいろいろと出てきてしまった。
「そもそも、、、あなたは__」
神蔵がそこまで言ったときに燦宮は手でそれを遮って言った。
「それより、神蔵さん! 早く私を連れて逃げてください!」
「ええっ?!逃げるって、どこから? 誰から?」
やはり、神蔵はますます訳がわからなくなっていった。
そのとき、突然、神蔵と燦宮の間に、天井の方から30cmほどの長さの一匹の白い蛇がポトリと落ちてきたのであった。
「うわわっ!!」
蛇なぞ、ほとんど動物園でしか見たことのない神蔵は、思わず大きな声を出してしまい、燦宮も「あっ!!」と驚いて口元を抑えてのけ反った。
「逃がしはしませんよ。燦宮!」
白い蛇は鎌首をもたげて、はっきりとそう言った。
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