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「神蔵さん。私の自己紹介がまだでしたね...失礼しました。 私は未魔女・燦宮の師匠で、真魔女の笹乃宮 淡蘭といいます」
師匠と呼ばれる笹乃宮は丁寧な口調で説明し始めた。
「えっ?!魔女ですか...あの箒に乗った魔女のことですか?」
神蔵のその言葉に、笹乃宮は「ホホホ」と上品に笑い、言葉をつづけた。
「神蔵さん。それは、確かに西洋では魔女はそのように言い伝えられてきましたし、実際にそのような西洋人の女もいたようですが...私たちは日之本古来の魔女なんですよ...そう、その起源は古く山土時代にまで遡ります」
「そ、そうなんですか!」
神蔵はその話に思わず驚いてしまった。
「...それでは、これまでの経緯と、あなたたちのこれからをお話ししましょう」
笹乃宮の声のトーンが少し変わり、厳しいものとなったため、神蔵はこれ以上口をはさむのをやめた。
「ここにいる燦宮は未魔女で私の弟子です。
5年の間、私の元で真魔女になる修行をしていたのですが、純極の真魔女になるためには、その修行の間、男との交わりを絶たなければなりません。
燦宮は純極の真魔女を志していたのですが、6年目のある日、ついにその禁を破り、好きな男と通じてしまったのです」
笹乃宮はそこでいかにも残念だというようにフッとため息をついた。
「あと、2年耐えれば良かったものの、燦宮は耐えきれず、そのように事になってしまいました...
そして、古からの掟により、その罰として置物として3年間過ごすこととなりました...しかも、3年の後は、純極の称号は与えられず、丙極の真魔女となるしかありません...
しかし、燦宮はその掟の禁も破り、こうして、神蔵さん、あなたという男を夫として引き込み、しかも夜の間だけ人間の姿に戻ることとなったのです!」
「え?...夫というと?」
神蔵は話の成り行き上、どうしても確認したくなった。
「そうです。あなたは燦宮の夫になります。そして、燦宮はあなたの妻となるのです。今後ずっと__」
(えええーっ?!)
神蔵は驚きのあまり言葉を失った。
こんな美人と夫婦に...という嬉しさも少しあったが、魔女とはいったい何者か?これからどうなるのか?わからない不安の方が大きくなってきた。
「神蔵さん! 私は、何千人もの男の中から見つけたあなたが、運命の赤い糸の人だと確信しています!」
燦宮がそこで言葉をはさみ、神蔵を熱い視線でジッと見つめた。
美人...確かに美人ではあったが、何か得たいの知れない恐怖が神蔵の心の中に広がってきたことを責めることはできないだろう。
(いつのまにやら、どうも大変なことに巻き込まれてしまったようだ、、、この先、俺はどうなるのだろう?)
神蔵は心の動揺を隠せなかった。
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