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第一節 小料理屋<有田亭> その1
「終点~、〇※△×いわかわ~」
男はハッと目を覚ました。
(えっ??...ここは...どこの駅だ?)
体を斜めにしてシートに寄りかかっている姿勢からヨロヨロと立ち上がり、電車のドアのところまで来ると薄暗いホームをキョロキョロと見渡して、駅名の書かれたプレートを探した。
(べ、、、紅羽岩河!...乗り過ごしたか!!)
男はしかめっ面になり、ホームの反対側の電車に乗り換えようと、大急ぎでシートに戻りショルダーバッグを掴むとホームに降り立った。
___男の名は神蔵秀人___、都内のIT関連企業に勤める32歳の独身である。
今日は職場の新人歓迎会の飲み会で二次会まで行ったのだが、そのあとは...良く覚えていない。
週末でなくノー残業デーの水曜日だったので、飲みすぎないように自分でも注意したはずだったのだが...
ちなみに、彼は自宅の最寄り駅である皇子駅から帝都地下鉄・南白線に乗り、飯畑橋で地下鉄・東勢線に乗り換え、面前中町にある会社に通勤していた。
歓迎会の一次会は面前中町の店であったが、二次会は帰りの方向が同じである職場の同僚二人を合わせた三人で、飯畑橋の行きつけの店に寄ったはずなのであるが...
「終点~、紅羽岩河...この車両は当駅止まり、本日の最終列車となります...なお、この列車はこれから車庫に入りますので、お降り遅れのないようにご注意ください」
(え?!下りの最終列車??...ウソだろ?...上りの列車はあるのか?)
彼は大急ぎでスマフォを取り出すと、帝都地下鉄のホームページで南白線の紅羽岩河駅の時刻表を調べた。
(今...0時44分...上りは、、、ああっ!36分が最終じゃないか!)
彼はガックリとしたが、酔った頭をふりしぼり、
(3駅分だから、タクシーで帰っても、そんなにかからなないよな...)
彼はホームを歩き、改札口のある地下1階に向かう階段を上がりかけた、、、が、自分の周囲やホームの様子に妙な違和感を覚えていた。
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