第一節 小料理屋<有田亭> その1

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(あれ?紅羽岩河って、1回くらいしか来たことないけど...こんな感じだったっけ?)  しかも、一番不思議なことは、、、確かに最終列車ではあったが、ホームに降り立った乗客が自分一人だけということだった。 (週末でない水曜日だから?...それとも、終電の終着駅だから??)  いずれにしても、酔った彼の頭ではそれ以上深くは考えられなかったので、そのまま足元に気を付けながら階段を上がりSaikaのパスで自動改札を抜けた。  改札や窓口には煌々と照明は灯っていたが、駅係員は一人も見かけなかった。 (何か...変だな)  神蔵の頭はまだ酔っていたが、妙な違和感だけは次第につのっていった。  自動改札を抜けて右方向に曲がりかけて、彼はハタと立ち止まった。  地上に上がる階段があるところに、、、なんと白いシャッターが降りている!  神蔵が後ろを見てみると、改札を出て左側にあるはずの階段の入り口にも大きな白いシャッターが降りているではないか! (えええっ?? こんな位置に階段のシャッターってあるんだっけ?...まさか工事中とか?...えーと、、、確か北翻(きたほん)通りで逆方向に戻るには奥の3番出口だっけ?)  神蔵はうろ覚えの記憶を辿り、さらに進んで、奥の右に入る通路に向かって歩いて行った。  すると、なんとそこにも白いシャッターが降りているではないか!  ただ、そのシャッターには金属の銀色の光沢を放つドアノブを持つ小さな白いドアが付いていた。 (終電だから、もうシャッターを降ろしたのかな?...このドア開くかな?)  神蔵はドアノブを掴んで右回しにひねってみた。 (おっ!開くじゃないか)  神蔵は手前にドアを引いて、そこから階段のあるところに出て行った___と、思ったが... 目の前には地上に出る階段は無かった。 (えええっ??)  なんと...目の前には古い日本家屋に囲まれたまっすぐな細い路地があったのだ。
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