第二節 魔女の掟 その1

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 しかし、部長も、お得意様の顧客から「いやー、熱心な社員さんじゃないですか」と言われ、バツが悪いのか「ちょっと遅れて二次会に参入しますので」と頭を下げつつ、近くの喫茶店に神蔵を連れ込み、酔っているのか30分越えの説教の後に、ようやく打ち直した議事録に5分間目を通し、「よし、これを明日の朝一までに、すべてのメンバーのレターボックスに入れておくこと!」と言い残し顧客の二次会に向かって行った。  神蔵は急ぎ会社に戻り__会社はまだ残業している者が居たが__ともかくも、16名分コピーを取って、それぞれの部署に駆け回って、それぞれのレターボックスに議事録の冊子を入れて、ようやく完了し、その後、自分が今日やり残した仕事を終えて、会社を出たのが22時半であった... 「あー、ついてないや」  神蔵はボヤキながら帰りの地下鉄に乗った。 (紅羽岩河駅のことを考えすぎて、こんなことになるなんて...こうなったら、とにかく何が何でもこの蛙をあの[有田亭]に返してやる!そうすれば、もうこんなおかしなことともサヨナラだ!)  神蔵は今朝とは違い、今度は強い意志で列車を乗り換え、今度は間違いなく紅羽岩河駅に着いた。  時刻を見ると23時19分であった。 (さて、慎重に行こう。この奥の3番出口だよな)  神蔵は改札を出ると他の乗客とともに右手奥の3番出口に向かったが、何の障害物も無く、あっという間に地上に上がる階段に突き当たってしまった。 (ううむっ、やはりシャッターなんかないじゃないか?あれは夢、幻だったのか?...それとも終電まで待てば階段下のシャッターが閉まるのか?)  彼はとりあえず駅員にきいてみることにして改札に戻った。  そして、改札窓口いた駅員に聞いてみると___ 「えっ?階段下のシャッター? そんな設備ありませんよ。夜中に改装工事もやっていませんし...シャッターは終電後にお客様が構内からすべていなくなったのを確認してから、地上付近の出口のシャッターを閉めますがね?」  ___と、言う返事で、神蔵は今度は一人だけで右手奥の3番出口に向かって行った。  すると、3番出口への角を曲がった辺りで、通路の左手に何か背の低いドアらしきものが壁にあることに気が付いた。 (アレ? この扉って、さっきもあったっけ?)  神蔵はちょっと不思議に思ったが、その扉のノブを右に捻ってみた。 (開いている! 入ってみるか!)  彼は勇気を出して扉を開き、1.2m程の高さの扉を頭を低くして入っていった___ ___と、そこには、あの、懐かしい古い日本家屋に囲まれたまっすぐな細い路地があったのだ___  
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