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富士子は5年の時間の中で一度だけ直樹の浮気を目撃した事がある。それでもそれ以降は一度も気配を感じる事は無かった。
直樹が帰って来た。
その表情で富士子は、さっきまで感じていた違和感が現実のものである事を知った。富士子はワザと明るく、
「ご飯食べに行こう。ボーナスが出たから。」
と、誘ったが、
「話があるから座って。」
と神妙な顔で言われた。
(ついにこの時が来た。出会った時からわかってた。きっと永遠には続かないと、この人は私の手には届かないと。どうして欲しいものはこんなに値がはるの。どうして何も手に入らないの?)
そんな日を今を富士子は永遠に焼き付ける。
「別れて欲しい。」
「他に好きな人が出来たのね。私の父に会ったの?」
いくら聞いても、
「そんな事は無い。」
と、直樹は言う。痕跡を少なくとも3つは見つけていた富士子は自分よりも好きな人が出来たと言ってくれた方が納得出来るような気がしていた。曖昧なサインを見落として途方も無い間違い探しをしてるみたいな気分だ。しかし直樹はあくまでも2人の問題だと言う。
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