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(君じゃなきゃダメだと言う人でなければ幸せにはなれない。別れようと言う人ではない。)
「わかった。」
「刺されると思ってた。やっぱり大人ですね貴方は。泣いたりわめいたりしない。いつも落ち着いてる。真面目過ぎるんだよ。お嬢様なのにどうして一人ぼっちのふりをするの。」
と、直樹は言った。
(この世で一番大切な人を私が傷付けるはずなんてないのに、刺すはず無いのに、落ち着いてなんてないのに。この人は今まで私の何を見て来たのかしら?私の事を何もわかってない。)
ふと浮かんだ考えをどうしても確認したくて、
「好きになった人は男の人なの?」
と、富士子が聞くと直樹はブーっと吹き出した。
「違うよ。それはない。さすがぶっ飛んでるな。」
と、ゲラゲラ笑っていつもの直樹に戻った。富士子が帰ろうとすると、
「最期だからしよう。」
と、直樹は言った。今、別れを告げたばかりなのに、そして富士子は別れを納得したのに去ろうとするとSEXしようと言う。富士子は混乱した。お腹が空いて空っぽの脳みそを振り絞る。
(男の人は好きでなくても出来るのだ。嫌いなら壊せばいいのに。もう2度と会う事は無いかもしれない。こちらから頼んでもいいくらいの事かもしれない。私は直樹が好きなのだから。
鏡に映るのは誰?)
煮えたぎる頭によぎった虚像を見ていた。もはや別人だった。直樹の事を好きな想いの丈を着飾ってる富士子だった。
富士子は食事の為に着飾ったD i orを脱いだ。いつ傷が付いたのか擦れて傷が付いてビロードに跡が付いている。
(もうこの服はダメだ。)
買ったばかりのダイヤモンドのピアスとパールのネックレスを剥がして、それが全く必要の無い物だった事を富士子は知った。
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