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ケーキの箱を受け取らず、鼻歌を歌いながら帰ったおじさんために、わたしはひとつ、ケーキの箱を脇にのける。
それからしばらくして、ぽつぽつと売れていき、10時の閉店間際に、ようやく最後のひとつが売れた。
「千絵美ちゃん、終了しようか」
店長が声をかけてきたけれど。
問題は、お金だけ払ってケーキを持って帰らなかったおじさんの分だけだ。
――どうしよう?
「酔っぱらった会社員のケーキか。きっと奥さんに取りに来させる気だったんだろうけれど、うまく奥さんに伝わっていなくて、もう取りに来ないんじゃないかなぁ」
そう言った店長も、困った顔になる。
「まあ、お金も受け取ったし、明日まで店の冷蔵庫に入れておくか」
そして、店長がケーキの箱を持ち、店内へと引き返す。
わたしも、道に出していたテーブルを、店内へ運びこもうと片づけはじめた。
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