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そのとき。
「すみません。親父がこちらで、ケーキを予約したって聞いてきたんですが」
背後から声をかけられ、振り向いたわたしは、そこに水島くんの姿を見つけた。
呆然と見つめるわたしに、水島くんが、頭をかきながらつぶやく。
「本当はおふくろが頼まれたんだけれど、どうしても俺が取りに行くって言って」
うっかり見つめ合った状態になり、固まってしまったわたしへ、水島くんは照れた笑いを浮かべた。
「ねえ。俺、中学時代の同級生なんだよ。覚えてるかな? ――じつは、前からきみが、ここでバイトをしているのを見かけていてさ、ずっと声をかける機会をうかがっていたっていうか……」
1年で、一番すばらしい日になりそうな気がしたわたしは、ぼんやり考える。
――ああ、あの真っ赤な顔をしたおじさんは。
――真っ赤な顔で、鼻まで真っ赤にした彼のお父さんは。
きっとわたしに、すてきなクリスマスプレゼントを運んでくれるサンタさんを連れてきてくれた、赤鼻のトナカイなんだ。
FIN
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