43人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱり、クリスマスはケーキだよな。そしてクリスマスケーキは、女の子が売るべきだよな」
そう言って、店長は24日、ストアの前の道路に机を置いて、わたしにクリスマスケーキの販売を命じてきた。
店内に流れるクリスマスソングを背に、頭には三角帽子。
目の前にはケーキが並んでいて、すっかり気分はクリスマスなんだけれど。
雪は降っていなくても、とっても寒い日。
身体も寒いけれど、心も非常に寒い。
それでも、ストア指定のエプロンの上から上着をはおり、わたしは店頭でケーキを売った。
「おねえちゃん、大変だなぁ」
そう言って買ってくれるのは、意外にも、夕方を過ぎた時間帯に通りかかる、会社員のおじさんたちだった。
ありがたいことに、ぽつぽつとだけれど売れていく。
きっと、ケーキ屋さんまで足を向けて買うことはしないけれど、こうして通りすがりに売られていたら、家族へのおみやげとして買っていこうかという気になるのだろう。
そうなると、店長の思惑通りで、なんだか腹が立ってくる。
それはきっと、わたしの心が寒いせいだからだろうな。
――結局、水島くんが姿を現さなかったから。
わたしが鳥羽ちゃんに言った通り、彼もきっと、彼女とデートなのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!