カ=リナ

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 あの人の生まれ育ったこの国は、昔も今も国内は力で統治され、他国への侵略戦争が日常化しているような武力国家だ。  年を追うごとに周囲の小国を吸収して、いまではこの近辺最大の国土を誇る国となっている。  対してわたしの国は、大きさとしては、あの人の国の規模より十分の一にも満たない。  けれど、国土のほとんどが平地で海に面し、陸路と海路の両方が発達している市場が盛んな国だ。  異国の業者が多く出入りし、さまざまな人種が入り乱れる、小さいながらも重要で活発な国となる。  規模や国の持つ戦力を考えれば、わたしの国は、すぐに他国に侵略され吸収されそうであるが、異国交流の貴重な場という認識が周囲の名のある大国にあり、そのために複数の有力な後ろ盾を持っているゆえに侵略されず、ひとつの国として存続できている。  そして、あの人とわたしの交際が周囲に暗黙で認められていたために、あの人の父親である国王から労せずとも手に入る国と思われていたことが、友好を維持している最大の理由になるだろうか。  その会議も、そこに国王が現れる前であろうと、後であろうと、よくある光景として滞りなく続いた。  決定権を持つあの人が黙って見守る中で、知に長けた臣下同士が話し合い、あの人の首肯という行動で了承を得ながら会議が進む。  けれども、急ぎの情報を持って臣下のひとりが会議の場に姿を現したとき、この十年間を満たし恒久とも思われていた空気が瞬時に変化するのを、わたしは感じた。
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