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肩口で切りそろえられた漆黒の髪に切れ長の眼、黒い瞳。
日本人形を思わせる美人だ。
わたしのぶしつけな視線に怯む様子もなく、小首をかしげて微笑むと、彼女は丁寧にあいさつを口にした。
高校生には思えない大人びた落ち着きまである。
名前を口にしたわたしへ向かって、彼女は、よく響くきれいな低音の声で告げた。
「まだ時間が早いし、教室へカバンを置いてから、学校内を案内するわね」
うなずいたわたしを確認した彼女は、にっこりと笑顔を返してきて歩きだす。
「1年の教室は4階なのよ。階段をたくさんあがることになっちゃうわね」
横に並んで歩く彼女は、そう言って苦笑した。
なので、わたしは、最初が肝心とばかりに元気よく口を開く。
「大丈夫よ。スポーツはあんまり得意じゃないけれど、わたしってば、都合のいいところは元気なの」
「あはは」
意外にも大きな声をたてて笑った彼女へ、わたしは好感を持つ。
そして、なれなれしくも上目づかいで言葉を続けた。
「ねえ、あんたのこと、夢乃って呼んでいい? わたしのことは、ほーりゅうって呼んでよ」
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