ままならない日々

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――いつか花咲く日が来ますよ。  落ち込んだままあてども無く彷徨い歩いていた時、そう言ってくれたのは、この橋の上で出逢った彼女だった。その透き通るような笑顔を見ていると、とても元気になれた。そうすると、またパソコンに向かう勇気が湧いてきた。  しかし書いてもなかなか評価はされなかった。そんなことがあるたびに彼女のところを訪ねると、簡単だがアドバイスをもらえるようになった。 ――ちょっと冗長になっているのでは無いですか? 表現にこだわるのは良いですけど、長すぎると読者は飽きてしまいますよ。  こんな感じ。文芸部の連中が言うことはまともに聞けないのに、彼女が言うと素直に聞くことができた。それを参考に書いていくと、少なくとも酷評は減っていった。  そして数日前、ついに小さな出版社が主催するコンテストに入選し、その作品が書籍化されることになったのだ。  酷評ばかりだった文芸部の仲間たちも、この時ばかりは若干嫉妬の入った祝福してくれた。  祝賀会が終わると、僕はすぐに彼女のところに向かった。
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