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やはり確かに、人の声らしきものが聞こえるのだ。
一体何処から聞こえてくるのだろう。
何を言っているのかは聞き取れない。続け様に、ぼそぼそ、ぼそぼそと声は続く。冷えた素足を忍ばせ声の聞こえる方にそっと歩いていくと、次第にその声が少しではあるがはっきりと聞こえるようになる。
声に導かれ廊下を曲がると、そこはこの屋敷の主人の部屋の前だった。僅かに空いた部屋のドアから、一筋の光が廊下に伸びている。
その中からどうやら声は聞こえるらしかった。空き巣でなかったことに安堵して、男はほっと胸を撫で下ろした。
しかし、一体何を喋っているのだろうー。こんな夜遅くに、屋敷の主人がどこかに電話でもしているのだろうか?
しかし、それにしては……。
声はだいぶ聞き取れるようになっていた。
むせび泣きのような、抑揚が不自然なそれがなんとなく気掛かりで、男は通りすがりざまに何気なく空いた扉の隙間に目をやった。
「……………?!」
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