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地元で開かれた夏祭りは、午後五時から始まっていたのに、私と弟の悠が家を出たのは午後七時半を回ったころだった。
悠は全身青の甚平を着て、慣れない下駄を鳴らしている。私は悠と手をつなぎながら、悠が転ばないよう慎重に走った。私は慣れたTシャツとジーンズで、お祭りに来ていた。
着いたのは午後八時。もう店も閉まりかけている中で、悠は「かき氷」と叫んだ。周りの人は驚きながらも素通りしてくれる。私は悠と一緒にかき氷を買いに行こうとした、その時だった。
「かき氷、もうなくなったみたいだよ。俺のかき氷、いる? ブルーハワイ」
ぬっと大きな影が現れた。背の高い男の人が、そこに立っていた。「大丈夫です」と私が答える隙に、男の人は悠にかき氷を悠に手渡した。私が驚いていると、男の人は私を見て言った。
「ありがとう、の一言はないの?」
私はいらっとして「頼んでませんから」と答えた。すると男の人は、あははっ、と楽しそうに笑った。
「かき氷食べている間でいいから、一緒に話そうよ」
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