エピソードⅡ 探索

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鍵を差し込み、思っていたより軽かった両開きの扉を開けて館の中へ入った。 入ってすぐに広い場所に出た。広いと言っても、玄関口というような場所だ。まだまだ小手先なのだろうし、まだ玄関口だと分かっていても、ここがこれだけ広いと館の中はどれだけ広いのだと思ってしまう。 設置されている靴箱や小さい棚にも細かい彫りが施されており、使えないとはいえ中に入っていたであろう物の残骸でさえ高価な印象を受ける。靴箱には靴などの靴箱本来としての役割を果たすものは入っていないし、棚には元の姿を保っていない金色のネジや豪華な装飾がされている壊れた写真立てを見つけた。写真立てに写真は入っていない。こちらも本来の役割を果たせていない。 壁紙も床に使われている石も、壊れていたり剥がれていなければ少しは綺麗だと思えたのだが、残念ながらこんな壊れた方をした物を見せつけられては少しも良い印象や感想を抱けないものだ。幽霊屋敷やゴーストハウスと勝手に呼ばれても仕方ない感じがする。 「……外より中の方が風化が酷い?」 外から館の外見を見た時より、中を見た時の方が古ぼけて見える。この剥がれた壁紙が人によって故意に剥がされた跡だと、なんとなくその光景が見えるからだろうか。抉られた大理石の床が明らかに人間の拳によって抉られていると、なんとなく理解しているからだろうか。……その二つは内装が古く見える理由に関係ないのか。どちらかというと“古く”ではなく“怖く”見える理由になってしまう。 「……もう何も無いか」 もとより何も無かっただろう。なんてツッコミは置いといて、俺は視線の真っ直ぐ先にある扉へ歩み寄り五、六歩で扉に着いた。玄関の扉のように、閉まっていたり鍵を探さなくてはならない……なんてことは無く、右へ回したドアノブは、玄関の扉を最後の難関とでもいうように、その難関を乗り越えたからもういいとでもいうように、あっさりと半周した。そして少し力を入れて奥へ押しやると、外開きだった玄関とは違い、内開き──つまり俺から見て奥側へ、キィィィ……と音を立てて開いた。
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