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1、 集中治療室
後から8時間とも9時間とも聞かされる大手術の後
ICUのベッドの上で睡魔に引きずられ、
時どき目覚めるという反復の何時間かののち
はっきりと意識がもどったのは、HCUに移動したあとだった。
ベッドごと移動したのか、体だけだったのか、何も記憶になかった。
そこは扉こそないものの確かに4畳ほどの個室であった。
その頃の私の一番の苦痛というか気がかりだったのは
目の前の景色が滝のように下方へ落下していくことであった。
回転性のめまいは何度か経験しているが、全く異なるこの現象に
心底慌てたものの、これこそ麻酔の後遺症で
そのうち治るだろうと思い込むことに成功し、じっと目を閉じることにした
目を閉じればたやすく眠りの世界に脳が浸っていく。
「この人とろんとしている」という看護師の声は聞こえたが体にまったく力が入らなかった。
そこでは総がかりでケアをしてもらっていた。私一人に担当看護師が複数。
時間おきに交代しているとしても
立ち替わり様子を見に来る。
体に取り付けられている電極はモニターに心電図と心拍数、血圧、血中酸素濃度の値を24時間表示しているのにもかかわらず、
何度も検温され、血圧を測定されていた。
そして2時間おきぐらいに血液検査がなされ、
結果は小さなレシート状の紙に数値が印刷表示される様だった。
私は思った。
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