第三部 /どうしてだろう、涙が出るのは

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もう少し色々な猶予を与えてくれたって良いと思います。 その時、冷たい風が吹き抜けてすぐ近くからもう葉も落ちきってしまった枝が互いにぶつかるカタカタという音が聞こえてきた。 顔を上げると楓さんの家の敷地内には大きくて立派な木が育っていて、その一番上は家の屋根をもう少しで越してしまいそう。 「切れば良いのにね、夏になるとこの木のせいで日当たり悪くなるのに意地でも切ろうとしないんだよ」 「これは思い出の何かなのでしょうか」 「父親が俺と一緒に育つようにって大分昔に埋めたものらしい。今じゃ育ちすぎて困るくらいなのに。このせいで俺の部屋に簡単に侵入してくる馬鹿が居て困る」 「泥棒ですかっ……」 それは確かに大変な事のような気がします。 私には上る事も一苦労だけれど、男の方でそれこそ小さい頃から木登りをよくしていらっしゃる方にとっては絶好の侵入経路にも思えてきた。 伸びる枝を視線で伝っていくと、確かに太い枝が丁度部屋の窓へと通じる通路を作ってる。

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