エコ

1/2
前へ
/2ページ
次へ
投稿者:悩めるOL 私の彼を見つけたら、誰か助けて下さい。 誰か、独りでも彼を助け出すことができるならと、望みをかけて、私は皆に知って欲しいのです。 もう、手遅れかもしれませんが……。 彼は、普通の男性でした。真面目なサラリーマンで、私に……誰にでも優しい彼氏でした。 けど、何故でしょうか。彼は突然、エコロジストに目覚めてしまったのです。 それは、彼と夜景が見えるタワービルに行ったときでした。 私と窓から街を見下ろした彼は、突然こう言ったのです。 「ヒドイな」と。 私は耳を疑いました。夜景を見て、何故そのような言葉を発したのか、わからない私は彼を問いつめました。 彼はそんな私に、真剣な眼差しで説明してきました。 「この大量の人工の光、こんな盛大な環境破壊を見せつけられて、喜べるか?」 私は、今までにない彼の迫力に、ただ、うなずくことしかできませんでした。 真面目な彼は、それから電気に頼らない暮らしを真剣に始めました。 彼がやってることは変だと思いましたが、それ意外は今まで通り、いたって真面目で優しい彼でしたので、私は彼とつきあい続けました。 彼の地球想いは日増しにエスカレートしていきました。 彼は電気の代わりに使っていた火も使うのをやめました。火は二酸化炭素を排出するからだそうです。 けれども、異常な環境保護生活意外は、やはり彼のままで、彼は私にその生活を強制してきません。だから、私は、そのままつきあいましたし、彼の好きにさせました。 けど、それは良くなかった。彼に一番近くにいて、彼をよく知ってる私が、止めるべきだった。精神科にでも無理矢理連れていけばよかった。 彼のためにはそうするべきだったと、後悔しています。 ある日、「ごめん、俺は死ぬよ」と彼に言われました。 私が驚くと、「人間が生きることでどれだけ地球を汚してるんだ? 俺が生きてるだけで、地球は汚されているから、俺は死ぬんだ」と彼は説明しました。 「それだけはダメ。生きて。あなた一人が亡くなっても地球環境は変わらない」と私は初めて否定しました。すると彼は、「ならば、山で獣になる。環境破壊をする人間をやめる」と、真っ直ぐな瞳で答えました。 もう今さら、何を言っても無駄でした。 真剣に地球環境のことを考えた彼は、街から、私から、去っていきました。 旅立ちの日、私は彼を見送りにいったのですが、彼の顔は、とてもすがすがしく、幸せそうでした。 けど私は、彼に普通の人間の暮らしをして欲しいと思ってしまうのです。 彼が去ってから、私は彼を探しに山に行ってみました。また会って、しっかり話し合うか、精神科にでも連れていけば何とかなる気がして。 しかし、彼の行方は全くわからず、会えません。せめて生きているのを、祈る毎日です。 だから、どうか、山で彼をみつけたら、助けてあげてほしいのです。人間の世界に戻れるように。 だけど、彼がそれで幸せなら、そのままにしておいた方が良いのではと、悩みます。 今、時間が戻せるなら私は、彼と夜景を見に行きません。 あの夜景が、全ての元凶だったように思えてならないのです……。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加