光背 こうはい

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 更に閻魔は言う。 「わしも何か褒美をやろう。何が良い?」  すると悪党は、地獄では金も宝も役に立ちはしない。ならばと、「好物の饅頭を頂戴しとうございます」と言った。  その謙虚な態度に閻魔は(いた)く感心し、「よし、これより千年の間、お前の掌に一日に一つ饅頭を与えてやろう」と約束した。  裁きが終り鬼に餓鬼の世界へと案内される悪党は、なんだ閻魔などと言うからさぞかし恐ろしい者かと思えば、俺なんぞの口車に乗せられる阿呆ではないか。と思った。  これからは毎日饅頭が手に入るのだ、食っても良し何かと交換してもよい。餓鬼共を饅頭で従えてもよいだろう。これは先が楽しみだ。と、思わず笑みが零れていた。  そんな悪党の姿を無表情で眺めていた青鬼は、光がこぼれる門の前まで来ると一言、「ここだ」と言った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加