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更に閻魔は言う。
「わしも何か褒美をやろう。何が良い?」
すると悪党は、地獄では金も宝も役に立ちはしない。ならばと、「好物の饅頭を頂戴しとうございます」と言った。
その謙虚な態度に閻魔は甚く感心し、「よし、これより千年の間、お前の掌に一日に一つ饅頭を与えてやろう」と約束した。
裁きが終り鬼に餓鬼の世界へと案内される悪党は、なんだ閻魔などと言うからさぞかし恐ろしい者かと思えば、俺なんぞの口車に乗せられる阿呆ではないか。と思った。
これからは毎日饅頭が手に入るのだ、食っても良し何かと交換してもよい。餓鬼共を饅頭で従えてもよいだろう。これは先が楽しみだ。と、思わず笑みが零れていた。
そんな悪党の姿を無表情で眺めていた青鬼は、先ほどの光がこぼれる門の前まで来ると一言、「ここだ」と言った。
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