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AM5:20
――ゴ、ゴ、ゴゴゴゴ、ゴゴ
巨大なダムが大量に放水している地響きを、間近で聞いているかのような振動だった。
天文学的なエネルギーを放出する小型核融合プラズマ推進エンジンが、背中の装甲越しにコックピットの狭い空間を重低音で埋めている。
全天周囲360°を映し出す高精細モニター。
宇宙の中心に、まるでコックピットが浮いているように見えた。
半透明のホログラムによって投射された四角い情報ウィンドウが、歓楽街の派手な看板の様にパイロットを取り囲んで浮いている。
赤とクリーム2色のフライトスーツを着た、小柄でまだ20代と思しき若い女性がそのコックピットシートに腰かけている。
左右のアームレストには、それぞれ一本ずつのフライトスティックと、足元には左右に出力を調整する、フットペダルが設置されていた。
彼女は左右の手でしっかりとフライトスティックを握り、複雑に配置されたスイッチを十本の指を器用に動かし、正確に素早く操作する。さらにその両足は、繊細にフットペダルを細かく必要な分だけ調整し、機体のエンジン出力をコントロールしていた。
つい三分前に、静かにシュトゥリングルスを発艦した十二機のセレシオン(GT/F-27Cヴァンダーファルケ)の目前にはL-3No.5コロニーを守るようにしてデブリ群の海が厚い層を形成して立ちはだかる。
これは、彼女たちにとっては都合がいい。なぜなら、このデブリ群が敵の目をくらましL-3コロニー郡宙域への侵入を可能にしてくれているからだ。
もちろんその行為に「リスク」が無いわけではない。
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