遠い日に忘れてしまった記憶がある―

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「ハルちゃん」  …… 「ハルちゃん」  誰だろう? 私を呼ぶ声がする―― 「ハルちゃん。おきて」  ……お母さん?   お母さんの声。  お母さんの匂いだ。懐かしいな…… 「ハルちゃん。起きなさい」  髪を撫でる優しい手のひら。  ずっと、こうしていたい…… 「ハルちゃん。  私はもう行かなくちゃいけないわ」  どこに? だめ、もう少し。  話したいことが、いっぱいあるの。    ――お母さん。あのね    ちっとも口が動かない。言葉が出ない。 「泣いちゃダメ。大丈夫よ。  この宇宙にいる限りあなたは一人じゃない。いつも見ているわ」  お母さん……     あのね……おかあさん―― 8db4a74e-aeca-4034-854a-344a52af5091  
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